9月3日 第165号

小規模グループケアへの積極的な取組みを
 −国庫補助協議は、今月末まで延長−

 過日、全施設にご依頼した「小規模グループケア実施状況アンケート」につきましては、平成16年8月2日現在で553施設中、500施設から回答いただきました(回収率91%)。会員各施設におかれましては、ご多忙のところご協力賜りありがとうございました。
 調査結果によると「小規模グループケア」(全児童養護施設1グループ)予算について、「都道府県・指定都市との協議を経て予算の確保済」または「確保の見込(県と厚生労働省が協議中)」と回答しているのは132施設、「今後都道府県・指定都市と協議する予定」の68施設を含めても200施設であり全施設の半数にも満たない実施数にとどまっています。
 すでに全会員施設にはご報告していますとおり、全養協は、平成12年9月から2年半にわたって児童養護施設のあり方について検討し、平成15年4月に「子どもを未来とするために」−児童養護施設の近未来−(近未来像U)をとりまとめました。この報告では、将来の子ども家庭福祉のあるべき姿の一端を示し、施設におけるケアの個別化とケア単位の小規模化についてもその必要性と将来構想を明らかにしています。
 また厚生労働省は、この報告を受けて社会保障審議会児童部会に設置した「社会的養護のあり方に関する専門委員会」の報告においても施設におけるケア単位の小規模化を進める必要があるとしています。 
 さらに全養協は、「近未来像U」の実現に向けて自民党を中心とした国会議員により運営された「児童養護を考える会」(代表幹事・丹羽雄哉衆議院議員、幹事・塩崎恭久衆議院議員他)にも積極的に参画するとともに、全児童養護施設のご協力により国会請願署名活動を展開、衆参両院にむけて26万人余りの署名を集め、72名の請願依頼議員による国会請願を実現し、第159回通常国会において採択されるなどの精力的な取組みの結果、平成16年度における児童養護施設の小規模グループケアや家庭支援専門相談員等の配置を実現しました。
 このような取組みの成果として結実した平成16年度児童養護施設関係予算ですが、昨今の経済情勢等の影響により都道府県・指定都市における予算措置に格差が生じるとともに、施設側からの積極的な働きかけがみられない状況も見られています。
 本調査結果によれば、本予算について「施設側の判断で今年度の予算協議を見送った」と回答した施設数が171施設となっており、平成17年度以降の児童養護施設関係予算の確保について、相当な影響が懸念されることから、全養協では、本事業の実施指針におけるケア単位(グループの人数)や設備上の工夫等についての平成20年度までの猶予を活用し、あらためて16年度中の取組みをすすめるよう、各都道府県・指定都市協議員を通じた働きかけ等をすすめる予定となっています。
 なお、厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課では、すでに9月末日まで国庫補助協議期間を延長する旨の事務連絡を各都道府県・指定都市所管部課に発出しています(協議員には原文送付済み)。平成17年度以降の取組みや、現在検討中の施設におかれましては是非、当該行政当局とご調整いただき、「小規模グループケア」の本年度実施をお願いします。
 実施にあたって不明な点がございましたら、全養協協議員、ブロック協議会会長または、全養協事務局までお問合せいただきますようお願いします。

地方六団体「国庫補助金等に関する改革案」まとまる
 −児童保護措置費負担金等を含む3.2兆円の補助金削減を要求−

 平成17年度国家予算編成の基本方針(骨太方針2004)では、平成17・18年度に約3兆円の国から地方自治体への税源移譲を行うこととされています。その前提として約3兆円の国庫補助負担金を削減する改革案の策定を政府から要請されていた全国知事会、全国市長会などをはじめとする地方六団体は、8月19日に「国庫補助負担金等に関する改革案」を取りまとめ、8月24日小泉首相に提出しました。
 改革案には児童保護措置費負担金などを含む児童保護費等負担金約4,127億円、社会福祉施設等整備費約1,304億円などが盛り込まれています。また、改革案では平成19年〜21年でさらに6兆円の補助金削減・税源移譲を要求しており、地方による補助金の一般財源化の要求は今後も続くことが予想されます。
 平成16年度予算の改革によって補助金が1兆円削減された際も、所得譲与税による税源移譲は6,500億円に止まり、さらに地方交付税交付金も大幅に削減されたため、地方自治体は厳しい財政運営を迫られました。既に財務省サイドは3兆円の税源移譲に難色を示しており、充分な財源が確保されなくなる恐れがあります
 さらに仮に一般財源化された場合に、私立保育所運営費等の財源が充分に保障されたとしても、地方自治体全体としての財源が確保されていなければ、実際には保育所ではない他分野事業に支出されてしまう恐れがあります。現状でも深刻な財政難を抱える地方自治体が多いことを考えると、一般財源化によって深刻な問題が生じることが懸念されます。
 骨太方針2004によれば、今後は地方六団体から出された補助金改革案を踏まえ、経済財政諮問会議などで検討を行ない、平成18年度までの三位一体改革の全体像を今年秋に明らかにし、年内に決定することとされていまが、全養協としても措置制度の根幹に関わる問題として、制度政策部会において組織的な対応を図るための検討をはじめており、厚生労働省との連携を図りつつ、今後の取組みをすすめていくこととしております。


新新エンゼルプラン策定に向けて 
 平成17年度 厚生労働省予算概算要求出る 8月27日


 厚生労働省は8月27日に平成17年度予算概算要求を財務省に提出しました。
 雇用均等・児童家庭局分では、本年6月に策定された「少子化社会対策大綱」に基づき、少子化の流れを変えるため、子どもが心身共に健やかに育つ社会、子どもを生み、育てる喜びを感じることができる社会を構築するために平成16年度中に重点施策の具体的実施計画として、新エンゼルプランに代わる平成17年度からの新たなプラン(新新エンゼルプラン)を策定することとしています。
 この新新エンゼルプランには、新エンゼルプランに盛り込まれていなかった「児童虐待防止対策の推進」が新規に位置付けられ、今年度から新規に予算化された「小規模グループケアの推進」などが掲げられています。
 なお、今後は三位一体改革によって平成17・18年度に行われる予定の約3兆円の補助金削減に向けての検討が進められる予定となっており、先般提出された地方六団体の補助金改革案における、児童保護措置費等負担金や社会福祉施設等整備費などの補助金が削減の対象とされており、来年度予算については予断を許さない状況にあると言えます。

児童養護施設関係予算概算要求内容
 (カッコ内の額は平成16年度当初予算額)

○施設の小規模化の推進
地域小規模児童養護施設 100か所 797百万円(797百万円)
 被虐待児等を家庭的な環境の中で養育し、入所児童の社会的自立を促進する。児童数6名を原則。専任職員2名配置。本体施設認可定員外で実施する児童養護施設。
小規模グループケア 623か所 1,777百万円(527か所 1,502百万円)
 全児童養護施設1グループ ⇒ 児童養護施設(定員50人以上は複数グループ可)、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設にも拡大

  施設内において他の入所児童への影響が懸念される等手厚いケアを要する児童を対象に、小規模グループによるケアを行う体制を整備し、これに対応した職員を配置する。児童数6名を原則。ただし、平成20年4月までは、個別的ケアが可能な場所を確保することができれば15名まで可。職員1名加配。本体施設認可(暫定)定員内で実施。

○ケア担当職員の質的・量的充実
家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)2,028百万円(1,865百万円)
被虐待児個別対応職員 1,546百万円(1,693百万円)
被虐待児受入加算 1,341百万円 (1,170百万円)
  児童養護施設等に入所する被虐待児にきめ細かな支援を行うための心理療法職員等の専門職員等の確保等(人件費以外でも可)の経費に充てる加算。
 被虐待児童ひとりにつき毎月26,200円。ただし1年間を限度。施設による再アセスメント可
(事務局注: 上記3項目について、平成16年度当初予算額と平成17年度概算要求額の増減がありますがこれは、平成16年度以前の既存予算科目と平成16年度新規予算科目の数値上の整理が行われたためであり、単価及び実施施設数の変更はありません)
児童福祉施設における被虐待児一時保護委託の促進 15百万円(平成17年度新規
 一時保護委託された被虐待児にきめ細かな指導を行うため、被虐待児の一時保護委託を受け入れた児童福祉施設に対して、心理的なケア等を行うための経費にあてる加算の創設。
 被虐待児童ひとりにつき毎月26,200円。ただし2か月間を限度
児童家庭支援センター 68か所 322百万円(60か所)


平成17年度 予算要望書 提出

 全国児童養護施設協議会は、去る7月16日に福島一雄会長が厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課に出向き、「平成17年度児童養護施設関係国家予算要望書」を提出しました(既送の「全養協情報 bQ4 28頁〜31頁」に掲載)。


第58回 全国児童養護施設長研究協議会 参加申込受付中
 〜絵画展、松島賞、永年勤続も〜


 今年の全国児童養護施設長研究協議会は既報のとおり、11月17日(水)〜19日(金)に奈良県・奈良市で開催します。参加申込締切は10月4日(月)となっていますのでお早めに東急観光鞄゙良支店(ご担当:山下、松尾)にFAXもしくは郵送でお申込ください。
 なお、例年通り、児童文化奨励絵画展、児童養護施設職員研究奨励賞(松島賞)、永年勤続職員感謝を実施します。各施設宛にすでに送付している要綱等をご覧のうえ、期日までに所定の方法でご応募等いただきますようお願いします。


映画「石井のおとうさんありがとう 岡山孤児院物語 石井十次の生涯」
 〜各地で上映開始〜


 児童養護施設関係者ならば石井十次(1865〜1914)の名を一度は、聞いたことがあると思います。このたび、「褐サ代ぷろだくしょん」が製作した映画「石井のおとうさんありがとう」(松平健主演、山田火砂子監督)が今夏から全国各地で上映されます。全養協ではこの映画の製作に賛同しています。(「石井のおとうさんありがとう」公式ホームページで全国各地での上映日程、配役、予告編などがご覧になれます。 http://www.gendaipro.com/juji/ )
 なお、石井記念友愛社友愛園、石井記念有隣園、石井十次資料館、岡山県児童養護施設協議会、広島県児童養護施設協議会、兵庫児童養護施設協議会、愛媛児童福祉施設連合会、大阪府社会福祉協議会児童施設部会、埼玉県児童養護・児童自立支援施設協議会などをはじめとする538の団体・個人が事前に製作協力券(1枚1,000円)をそれぞれ100枚以上購入されています(映画のエンディングに掲示されています)。
 上映等に関わるお問合せにつきましては、下記まで。

「褐サ代ぷろだくしょん」
 〒161−0032
  東京都新宿区中落合1−20−16−202
   TEL 03−3371−3925
   FAX 03−3364−3218



厚生労働省人事異動について

 平成16年7月22日・23日付の人事異動について、児童養護施設関連の異動をお知らせします。 伍藤忠春氏(雇用均等・児童家庭局長)、および山田 亮氏(同局家庭福祉課長)に異動はありません。

【新・職名 等】 【氏 名】 【旧・職名】
厚生労働事務次官 戸苅 利和 厚生労働審議官
厚生労働審議官 辻  哲夫 保険局長
雇用均等・児童家庭局 総務課長 高井 康行 医薬食品局食品安全部企画情報課長
大臣官房総務課企画官
*雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室長併任、同 家庭福祉課母子家庭等自立支援室長 併任
山本 麻里 大臣官房厚生科学課健康危機管理官
    〃    健康危機管理対策室長併任
政策企画官
*政策統括官付社会保障担当参事官室併任、雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室長併任解除
古川 夏樹 大臣官房総務課企画官
雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室長併任
(辞職) 大塚 義治 厚生労働事務次官

全国社会福祉協議会 人事異動(平成16年8月31日付)
【新・職名 等】 【氏 名】 【旧・職名】
(退職) 合山 桂子 児童福祉部部員(全養協担当)



平成16年度 小規模グループケアの実施状況 (平成16年8月2日現在)
553施設中、500施設から回答受け

T.予算措置状況集計
項目 回答数
都道府県・指定都市と協議し、予算確保済み
71 14.1%
都道府県・指定都市と協議し、現在、厚生労働省と協議中
61 12.1%
都道府県・指定都市と協議したが、都道府県・指定都市から承認 されなかった
13 2.6%
内訳 3@再度、都道府県・指定都市に要請する(している) 10 2.0%
3A再度、都道府県・指定都市に要請しない(予定) 1 0.2%
na 2 0.4%
これから都道府県・指定都市と協議する
68 13.5%
都道府県・指定都市にて予算確保済みとの情報を得ている
32 6.3%
内訳 5@都道府県・指定都市の担当課からの事業実施の打診があった 24 4.8%
5A都道府県・指定都市の担当課からの事業実施の打診がない 6 1.2%
na 2 0.4%
施設の判断で今年度の予算措置は見送った
(見送る予定):県との協議なし
171 33.9%
その他
88 17.5%
合  計 504 100.0%
(重複回答あり)

U.実施形態(検討中または17年度から実施予定も含む)

実施形態 回答数
1. 施設建物内で実施
131 47.5%
2. 施設のある敷地内(一筆の土地)で実施
63 22.8%
3. 施設のある敷地外で隣接もしくは道路を隔てた近隣地で実施
26 9.4%
4. 施設のある敷地外で自転車や自動車等で移動が必要なほどの距離があるところで実施
22 8.0%
5. 未定
26 9.4%
複数回答 8 2.9%
合  計 276 100.0%

(回答数)
(1) 日常生活に必要な設備がある
60
(2) 日常生活に必要な設備がない(今後整備する計画書を提出した・提出する予定)
12