11月1日 第166号

児童養護施設 児童保護措置費の国庫負担制度維持を求める
地方六団体提案に対する厚生労働省の最終的な代替案が示される

 10月28日、三位一体改革における地方六団体の国庫補助負担金等の改革案に対し、厚生労働省は最終的な代替案を内閣官房に提出しました。
 今後は、厚生労働省をはじめとする関係各省の代替案をもとに内閣官房長官、財務大臣、総務大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の4閣僚が中心となって調整を行い、関係閣僚との折衝を経て11月半ばに改革の全体像をまとめることとされています。

児童保護措置費の国庫負担を維持し、国民健康保険等の国庫負担率の引き下げを対案として提示
 地方六団体の改革案では、厚生労働省関係で総額約9,440億円の補助金等の削減が求められており、児童養護施設の児童保護措置費をはじめとする次世代育成支援関連の補助金のほとんどが削減対象とされていましたが、厚生労働省の代替案では、国民健康保険、生活保護費、児童扶養手当の国庫負担率を引き下げること、および600億円程度の国庫補助負担金が廃止・移譲対象補助負担金として検討していることが示されました。
 そして、児童養護施設の児童保護措置費を「存続する補助負担金」として位置づけるとともに、児童福祉施設等の社会福祉施設整備費等の補助金など児童福祉関連補助負担金を再編・整理し、次世代育成支援対策交付金(仮称)を創設することが提案されています。

次世代育成支援交付金(仮称)、児童虐待・DV対策等総合支援事業(統合補助金)等の創設
 児童福祉関係では、今回新たに一つの交付金と三つの統合補助金の創設が示されています。これらは、未だ地方自治体の事務として定着しているとはいえず、今後更に国が積極的に関与して推進する必要がある事業のうち、地方自治体が自主性・裁量性を更に発揮することが相応しいものについて、従来の細分化された補助金・負担金から、分野ごとの大括りな統合補助金・交付金へと再編・統合を提案するもので、いずれも17年度において創設すると提案されています。
 
1. 次世代育成支援対策交付金
ソフト交付金とハード交付金の2種類からなります。
(1) ソフト交付金
 年末に策定予定の新新エンゼルプラン(仮称)に基づく重点事業を支援するため、一定の算定基準に基づき、市町村に対して交付金を交付し、次世代行動計画に基づく事業計画を包括的に支援するものとされており、各自治体の策定する行動計画の範囲内であれば、使途は各自治体の自由裁量とされています。(児童保護費等補助金の一部等)
(2) ハード交付金
 待機児童解消や児童養護施設などの小規模ケア化に資するような施設整備を中心に様々な地域の子育て支援サービス拠点も含めた面的な整備を重点的に支援するために市町村および都道府県に対して交付するもので、交付額の範囲内で各自治体は配分内容を決定し、行動計画内での配分変更ができるものとされています。(社会福祉施設等施設整備費補助金等の一部等)
2. 児童虐待・DV対策等総合支援事業(統合補助金)
 各自治体における要保護児童対策の一層の推進が図られるよう、従来の児童虐待防止対策関連事業、DV・女性保護対策関連事業等を再編・整理し、補助基準等の緩和を図ることにより、各自治体の弾力的な事業運営を可能とする。(児童福祉事業対策費等補助金の一部、児童保護費等補助金の一部、婦人保護事業費補助金の一部等)
3. 母子家庭等対策総合支援事業(統合補助金)
 自治体における母子家庭等の自立支援、生活支援等について一層の推進が図られるよう、従来の母子家庭等日常生活支援事業、母子家庭自立支援給付金等を再編・整理し、補助基準等の緩和を図ることにより、各自治体の主体的かつ弾力的な事業運営を可能とする。(母子家庭等対策費補助金)
4. 母子保健医療対策等総合支援事業(統合補助金)
 各自治体における子どもの健康と母子保健医療体制等の一層の充実が図られるよう、従来の女性の健康支援事業、不妊治療に対する支援事業等を再編・整理し、補助基準等の緩和を図ることにより、各自治体の主体的かつ弾力的な事業運営を可能とする。(母子保健衛生費補助金、地域医療対策費等補助金の一部)

第58回 全国児童養護施設長研究協議会開催期間中に結論か?

 三位一体改革案は、11月2日の政府・与党会議、11月11日の全国知事会議、翌日に予定されている小泉首相が出席する国と地方団体の会議などを経て、奈良で開催している全国児童養護施設長研究協議会の二日目にあたる11月18日(木)には全体像の決着を図り、年末の予算編成に反映される見込みです。


児童福祉法の一部を改正する法律案 審議入り間近

 先の通常国会から継続審議とされていた「児童福祉法の一部を改正する法律案」については、現在開催中の第161回臨時国会(12月3日会期末)での審議入りが間近となりました。この法案は、児童相談に関し市町村が担う役割を明確化すること、乳児院・児童養護施設入所児童の年齢緩和、里親の監護・教育・懲戒に関する権限の明確化、保護を要する児童に関する司法関与の強化などが盛り込まれたものです。

平成17年度 予算要望書 提出

「緊急集会 三位一体改革案と日本の児童福祉を考える市民集会」

 平成16年10月12日(火)に東京都港区「ニッショーホール」で、約700名の参加者を得て、「緊急集会 三位一体改革案と日本の児童福祉を考える市民集会」が開催されました。
 この集会は、先に地方六団体が取りまとめた「三位一体改革案」には、廃止して地方自治体に財源移譲すべき国庫補助負担金のなかに、児童虐待・DV対策関連費(児童保護費負担金、児童福祉事業対策費等補助金、婦人保護事業費補助金など)が含まれていることから、児童福祉施設等で生活する子どもたちの生活を守ることの重要性等を市民の立場から広く世論に訴え、要保護児童福祉施策は国家責任として行われることを強く求めるために、「児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク」をはじめとするNPOや児童福祉施設、障害児施設関係団体等が主催したものです。
 集会の冒頭に、児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワークの吉田恒雄代表から本集会開催の趣旨説明を受けたのち、各界を代表する方々から意見表明がありました。そのなかで全国児童養護施設協議会の福島一雄会長は、児童福祉施設等の立場から「児童保護措置費等の一般財源化は時期尚早。国家責任を明確にすべき」である旨の意見表明を行いました。
 集会の最後に参加者全員でアピール文を採択し、参加者はそれぞれ厚生労働省および国会議員等に要望活動を行いました。

主 催:
児童虐待防止法の改正を求める全国ネットワーク/日本子どもの虐待防止研究会/子どもの虐待防止民間ネットワーク/DV防止法を改正しよう全国ネットワーク/全国社会福祉協議会全国乳児福祉協議会/同 全国児童養護施設協議会/同 全国母子生活支援施設協議会/全国里親会/全国児童自立援助ホーム連絡協議会/全国情緒障害児短期治療施設協議会/日本知的障害者福祉協会/全国盲ろう難聴児施設協議会

意見表明
 ○ 学識経験者  社会福祉法人 子どもの虐待防止センター
理事 広岡智子 氏
 ○ 弁護士  平湯 真人 氏
 ○ 児童福祉施設関係者 全国児童養護施設協議会
会長 福島一雄 氏
 ○ 障害児施設関係者 (財)日本知的障害者福祉協会
発達支援部会 部会長 加藤正仁 氏

ご参会いただいた国会議員の方々
(発言順)
松岡  徹  参議院議員  (民主党  比例代表)
塩崎 恭久 衆議院議員 (自民党 愛媛1区)
福島  豊 衆議院議員 (公明党 大阪6区)
石井いく子 衆議院議員 (共産党  近畿比例区)

「三位一体改革案と日本の児童福祉を考える市民集会」アピール文

 子どもは「未来の日本」です。少子化が止まらず、子ども虐待が急増する今、国は百年の大計をもって日本の児童福祉の課題に取り組む必要があります。
 現在、児童福祉施設で生活している子どもたちや里親に養育されている子どもたちの大半は、親からの虐待を経験しています。また施設入所中の母子世帯の多くはDV被害にあっています。盲・ろう・難聴・知的等の障害がある子どもたちもまた社会的に養護されています。これらの子どもたちの生活は、国が保障する責任があります。
 これらの子どもたちの生活を保障する社会的養護の場としての児童福祉施設等への児童保護措置費が一般財源化される地方六団体の改革案について、強く疑問を感じます。
 本年10月1日に改正施行された児童虐待防止法では、地方自治体の責務が大幅に拡大されました。今後はさらに、子どもや親へのケアに関する新たな施策の実施など、かけがえのない子どもたちの生命の安全、心身の健全な発達の保障が求められています。しかし、そのための地方自治体の取り組みは緒についたばかりであり、現時点での一般財源化は無謀と言う他なく、地域間格差をますます広げる要因になるものと思われます。
 私たちは、児童虐待・DV関連等、児童福祉、障害児福祉に関わる国庫補助負担金を地方自治体へ移譲することについて、再考していただくよう関係各方面に強く訴えます。

 2004(平成16)年10月12日

「緊急集会 三位一体改革案と日本の児童福祉を考える市民集会」
参加者 一同


全国児童養護施設退所児童自立支援事業 受付開始

 全養協ではこのたび、平成17年度までの試行事業として「全国児童養護施設対処児童自立支援事業」の受付を開始しました。
 なお、生活福祉資金貸付制度についてのご質問等がある場合は、各市区町村社会福祉協議会にお問合せください。