12月27日 第167号

平成16年度予算を確保 施設整備費は「交付金」化
 ―平成17年度予算政府案 閣議決定−

 政府は12月24日の臨時閣議において、一般会計総額82兆1829億円の平成17年度予算政府案を決定しました。今回の予算編成においては11月26日に政府・与党が合意した「三位一体改革の全体像」に基づいた作業が進められました。この結果、児童保護措置費、母子生活支援施設運営費、民間保育所運営費の国庫負担金は削減対象から除外され、児童福祉施設の施設整備費については交付金化が図られることになりました。そして、児童福祉関連の国庫補助負担金で削減し、地方に税源移譲するものとして、厚生労働省案にあった産休代替保育士費等補助金、1歳6か月児健康診査費負担金及び3歳児健康診査費負担金に加え、保育士養成所費と公立保育所分の延長保育事業費基本分が削減され、税源移譲されることとなりました。
 なお、児童福祉施設関係での新規予算では、「児童福祉施設における被虐待児一時保護委託の促進(1,500万円)」が計上されました。これは、一時保護委託された被虐待児にきめ細かな支援を行うため、被虐待児の一時保護委託を受け入れた児童福祉施設に対して、心理的なケア等を行うための必要な経費に充てる加算です。さらに、平成16年度から児童養護施設に認められた「小規模グループケア」の対象施設に乳児院、情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設まで拡大されました(概算要求にあった、児童養護施設での複数実施は見送り)。
 
「子ども・子育て応援プラン」も
 また新エンゼルプランにかわる新たなプランについて政府は、12月24日閣議後に首相官邸で少子化社会対策会議(会長・小泉純一郎首相)を開き、来年度から5年間の新たな国の少子化対策計画を承認しました。6月に策定された「少子化社会対策大綱」で定めた施策の具体策で、名称は「少子化社会対策大綱に基づく重点施設の具体的実施計画について」(子ども・子育て応援プラン)としました。

 今回の予算案の大きな特徴は、三位一体改革を踏まえた「交付金」及び「統合補助金」の導入があります。基本的な考え方としては、都道府県・指定都市・中核市・市区町村ごとの主体性や事業実施の弾力化さらに計画性に基づいた予算配分としています。なお、詳細については平成17年3月に開催予定の主管課長会議等に示される予定です。
 

―児童養護施設関係予算の主な内容―
(1) 施設の小規模化の推進 2,298百万円 ⇒ 2,298百万円
@ 地域小規模児童養護施設の推進 100か所→100か所 797百万円 ⇒ 797百万円
 被虐待児等を家庭的な環境の中で養育し、入所児童の社会的自立を促進するため、地域小規模児童養護施設の設置を着実に推進する。
A 児童養護施設の小規模グループケアの推進 1,501百万円 ⇒ 1,501百万円
 施設内において虐待など心に深い傷を持つ児童のうち、他の入所児童への影響が懸念される等手厚いケアを要する児童等を対象に、小規模なグループによるケアを行う体制を整備し、これに対応した職員を配置する。
 ※児童養護施設で実施している小規模グループケアの対象施設を乳児院、情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設まで拡大する。
(2) ケア担当職員の質的・量的充実 4,998百万円 ⇒ 5,039百万円
@ 家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)の配置 1,865百万円 ⇒ 2,014百万円
 施設入所児童の早期家庭復帰等を図るため、施設入所前から退所まで、更には退所後のアフターケアに至る総合的な家庭調整を担う家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)を配置する。
 (乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設を対象)
A 被虐待児個別対応職員の配置 1,693百万円 ⇒ 1,538百万円
 虐待を受けた児童の施設入所の増加に対応するため、被虐待児個別対応職員を配置する。
 (児童養護施設、母子生活支援施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設を対象)
B 被虐待児受入加算 1,170百万円 ⇒ 1,341百万円
 施設に入所する被虐待児にきめ細かな支援を行うための心理療法担当職員等の確保の経費を加算する。
C 母子生活支援施設特別生活指導費加算 146百万円
 障害のある親等処遇困難な母子が4人以上いる施設を対象に母子指導員を配置する。
(3) 里親支援の拡充 450百万円 ⇒153百万円
@ 専門里親 124人 → 170人(委託措置児童) 112百万円
専門里親への委託対象児童について、従来の被虐待児のほか、非行等により処遇困難な児童も対象に加える。(事項要求)
A 里親への生活援助等や里親相互間の援助(里親支援事業) 338百万円
(児童虐待・DV対策等総合支援事業の一部)
 里親の養育負担を軽減するため、児童相談所等において研修の上登録された者を、里親からの援助の求めに応じて派遣する「里親養育援助事業」、相互の交流により里親自身の養育技術の向上等を図る「里親養育相互援助事業」など里親支援を着実に実施する。
(4) 児童虐待・DV対策等総合支援事業の創設(統合補助金) 1,775百万円
 各自治体における要保護対策、DV対策等の一層の推進が図られるよう、従来の児童虐待防止対策関連事業、DV・女性保護対策関連事業等を再編・整理し、補助基準の緩和等を図ることにより、各自治体の主体的かつ弾力的な事業運営を可能とする統合補助金を創設する。
【統合した事業】
児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)
 義務教育終了後、児童養護施設等を退所し、就職する児童等に対し、相談その他の日常生活上の援助及び生活指導を行う自立支援ホームの設置を着実に推進するとともに、児童の自立に向けた職場開拓など、関係機関との対外関係調整について一層の体制整備を図る。
児童家庭支援センター
 虐待や非行等の問題に対し相談に応じる児童家庭支援センターの設置を推進し、地域に密着した相談・支援体制を強化する。
ひきこもり等児童福祉対策事業
 学生等のボランティア(メンタルフレンド)をひきこもり等の児童の家庭等に派遣し、また、ひきこもり等の児童を一時保護所等に宿泊又は通所させ、集団的に生活指導、心理療法等・レクリエーションを実施する。
自立促進等事業
 児童養護施設等における入所児童のケアに関する創意工夫や自立に向けた取組を反映した事業及び早期家庭復帰につながる事業等を実施する。
【上記以外に下記の事業も含む】
(・児童虐待防止対策支援事業、里親支援事業、婦人相談員活動強化費、売春・DV対策機能強化費)

〇三位一体の改革に係る政府・与党合意(児童福祉関係)の内容
〇 税 源 移 譲
・延長保育事業費基本分(公立分) 81億円
・産休代替保育士費等補助金 10億円
・保育士養成所費 1億円
・1歳6か月児、3歳児健康診査費負担金 14億円
(計 106億円)
〇 交 付 金 化
・社会福祉施設等施設整備費補助・負担金(保育所等)について交付金化
児童扶養手当に関する負担金の改革
 児童扶養手当の補助率の見直しについては、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、平成17年秋までに結論を得て、平成18年度から実施する。
次世代育成支援対策交付金(ソフト交付金)〈創設〉
                        34,568百万円
 次世代育成支援対策推進法に規定する市町村行動計画に定められている地域の特性や創意工夫を活かした子育て支援事業その他次世代育成支援対策に資する事業の実施を支援する。
1.予 算 額 平成17年度予算案   34,568百万円
2.趣   旨  次世代育成支援対策推進法に規定する市町村行動計画に定められている地域の特性や創意工夫を活かした子育て支援事業その他次世代育成支援対策に資する事業の実施を支援することにより、次世代育成支援対策の推進を図るものである。
3.事業対象  次世代育成支援対策交付金の対象となる事業については、つどいの広場事業、延長保育事業を始めとする地域の特性や創意工夫を活かして市町村が実施する次世代育成支援対策に資する市町村事業を対象とする。
 なお、交付に当たっては、年内に策定予定の新エンゼルプランに代わる新たなプランに基づく重点事業を中心に、市町村が策定する行動計画に基づく毎年度の事業計画を総合的に評価を行った上で、予算の範囲内で交付額を決定する。
4.実施主体  市町村
5.重点配分となる事業 ・つどいの広場事業
・子育て短期支援事業(ショートステイ事業・トワイライト事業)
・乳幼児健康支援一時預かり事業
・ファミリー・サポート・センター事業
・延長保育促進事業
・育児支援家庭訪問事業
・総合施設モデル事業(平成17年度限り)等
6.対象外事業 個人に金銭給付を行い、又は保育料等個人の負担を直接的に軽減する事業
国が別途定める国庫負担(補助)制度により、現に当該事業の経費の一部を負担し、又は補助している事業
既に一般財源化(税源移譲)の対象とされた事業
   (公立保育所の延長保育の基本分など)  等
7.交付金の使途  6.に掲げる事業を除き、交付された額の範囲内で毎年度の事業計画に定めるいずれの事業に充てるかは自由。

【参   考】
〇次世代育成支援対策交付金へ移行する事業
平成16年度予算の状況
育児支援家庭訪問事業
つどいの広場事業
乳幼児健康支援一時預かり事業
ファミリー・サポート・センター事業
市町村地域子育て支援推進強化費
子育て短期支援事業(ショートステイ事業・トワイライト事業)
延長保育促進事業
食育等推進事業
へき地保育所費
家庭支援推進保育事業
保育所地域活動事業
世代間交流等事業
異年齢児交流等事業
育児講座・育児と仕事両立支援事業
小学生低学年児童の受け入れ
地域の特性に応じた保育需要への対応
家庭的保育を行う者と保育所との連携を行う事業
育児等健康支援事業
平成17年度予算案
 
 
 
 
 
 
 
  次世代育成支援交付金
 
 
 
 
 
 
 
 
  ・総合施設モデル事業
 

次世代育成支援対策施設整備費等交付金 (ハード交付金)
〈 創 設 〉
16,704百万円
  次世代育成支援対策推進法に規定する都道府県行動計画、市町村行動計画に定められている地域の実情に応じた次世代育成対策に資する施設整備等の実施を支援する。
1.予 算 額 平成17年度予算案    16,704百万円
2.趣   旨  児童福祉施設等に係る施設整備について、都道府県・市町村が作成する整備計画に基づく施設の整備を推進し、次世代育成支援対策の充実を図る。
3.対象施設  児童相談所及び一時保護施設、児童養護施設、乳児院、児童自立支援施設、母子生活支援施設、情緒障害児短期治療施設、児童家庭支援センター、子育て支援拠点施設、保育所、へき地保育所、婦人相談所、婦人保護施設 等
4.実施主体  都道府県・指定都市・中核市・市町村
5.実施方法  都道府県・市町村が策定する行動計画をもとに作成する整備計画に基づき、保育所の待機児童数、ソフト事業等の取組状況、これまでの施設の整備状況や老朽度などを勘案し、各自治体毎の整備計画を総合的に評価を行った上で、予算の範囲内で交付する。
6.対象外事業  土地の買収は整地に要する費用、職員の宿舎に要する費用、その他施設整備費として適当と認められない費用
7.交付金の使途  6.に掲げる事業を除き、交付された額の範囲内で都道府県・市町村整備計画に記載されているいずれの施設の整備に充てるかは自由。

【参   考】
〇次世代育成支援対策施設整備費等交付金
平成16年度予算の状況
社会福祉施設整備費
国庫補助(負担)金

《都道府県・指定都市・中核市申請》

 児童相談所及び一時保護施設、児童養護施設、乳児院、児童自立支援施設、母子家庭支援施設、情緒障害児短期治療施設、児童家庭支援センター、子育て支援拠点施設、保育所、へき地保育所、婦人相談所、婦人保護施設 等
※市町村、社会福祉法人等は都道府県等を経由して申請

都道府県の整備計画に掲げる社会福祉法人等
 児童養護施設や母子家庭生活支援施設等の社会福祉法人等については、都道府県に申請。
市町村の整備計画に掲げる社会福祉法人等
 保育所の整備を予定している社会福祉法人等にあっては、市町村に申請。
平成17年度予算案
次世代育成支援対策
施設整備費等交付金

《都道府県・指定都市・中核都市計画に基づく申請》
 都道府県立施設等及び社会福祉法人等が設置する以下の施設

児童相談所及び一時保護施設、児童養護施設、乳児院、児童自立支援施設母子生活支援施設、情緒障害児短期治療施設、児童家庭支援センター、子育て支援拠点施設、保育所、へき地保育所、婦人相談所、婦人保護施設 等
都道府県等の計画に基づき、国に直接申請
《市町村計画に基づく申請》
 市町村立の施設及び社会福祉法人等が設置する以下の施設

保育所、へき地保育所、子育て支援拠点施設 等

※市町村計画に基づき、国に直接申請

児童虐待・DV対策等総合支援事業(創設)
                         1,775百万円
  各自治体における要保護児童対策・DV対策等の一層の推進が図られるよう、従来の児童虐待止対策関連事業、DV・女性保護対策関連事業等を再編・整理し、補助基準の緩和等を図ることにより、自治体の主体的かつ弾力的な事業運営を可能にする統合補助金を創設する。
1.予 算 額   平成17年度予算案  1,775百万円
2.趣   旨  各自治体における要保護児童対策・DV対策等の一層の推進が図られるよう、従来の児童虐待防止対策関連事業、DV・女性保護対策関連事業等を再編・整理し、補助基準の緩和等を図ることにより、自治体の主体的かつ弾力的な事業運営を可能にする。
3.対象事業  児童虐待・DV対策等総合支援事業の対象となる事業は、地域の実情に応じて都道府県等が実施する自立生活援助事業(自立援助ホーム)、児童虐待防止対策支援事業、ひきこもり児童対策事業、自立促進等事業、児童家庭支援センター事業、里親支援事業、婦人相談員活動強化及び売春・DV対策機能強化事業とする。
 なお、交付に当たっては、都道府県等の事業計画等に基づき、交付額を決定する。
4.補助根拠  予算補助
5.実施主体  都道府県・指定都市・中核市
6.補助率  1/2、1/3 ・・・ 各事業ごとに平成16年度負担率と同じ