3月30日 第180号

1.全国家庭福祉施策担当係長会議の内容について

 先日、全国家庭福祉担当係長会議が開催されました。児童養護施設関係予算については、全国児童養護施設協議会が長年要望してきた「身元保証人確保対策事業」が創設され、また個別対応職員の常勤化が主な項目となっています。
  【平成19年度家庭福祉対策関係予算(案)の概要】
  (平成18年度予算額)     (平成19年度予算(案))
   240,486百万円   →   245,051百万円(1.9%増)
 詳細につきましては、全国家庭福祉施策担当係長会議(全社協児童福祉部複製)資料を添付しますのでご参照ください。

【全国家庭福祉施策担当係長会議の概要】
(家庭福祉課・吉田補佐挨拶)
2030年若年人口大幅減少が見込まれる今こそ、すべての子ども家庭を大切にという視点において制度施策・意識改革を図る必要性がある。
国は内閣官房長官を議長とした「子どもと家族を応援する日本」重点戦略会議を立ち上げ「地域・家族の再生分科会」等4分科会を設置した。その分科会議論を5月中に整理し、6月を目途に基本的考え方を取りまとめ、骨太方針2007に考え方を反映させていく方向で議論される予定である(重点戦略会議は2007年末を目途にまとめる予定)。
社会的養護の分野においては、2月に「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」が立ち上げられ、関係団体においてはヒアリングが行われた。4月以降には具体的な内容のつめの作業となってくる。
平成19年度の予算の重点としては
・(新規)身元保証人確保対策事業を創設
・里親制度の拡充
・母子家庭において在宅している母親の就業支援事業の推進
・養育費相談・支援センターの創設と相談関係事業の拡充
母子家庭等の自立支援対策には自治体間格差がある。積極的な推進をお願いしたい。
施設整備面においては、情緒障害児短期治療施設(24県31か所設置)は、21年度までには全都道府県設置を目指しており(子ども子育て応援プラン)、未設置の都府県は早急な取り組みをお願いしたい。
平成18年度は児童福祉施設、とりわけ児童養護施設における不祥事件が多発したことは遺憾なことであり、平成18年10月に総務課長通知も出されたところである。子どもが一番の信頼を寄せるべき職員による不適切な対応については、今後一層、未然防止と早期発見に取り組んで欲しい。

(家庭福祉課・本間予算係長)
施設の小規模化について
@ 小規模グループケアを行う体制の整備:31か所増の全580か所/1億円プラスの16億66百万円
A 地域小規模児童養護施設:100か所→200か所 15億97百万円
(平成18年3月に一定要件を満たす施設には複数設置を認めた。実施室の伸びを勘案して2倍の数を計上した。)特に中・高生の居室については個室化を積極的にすすめてほしい。またハード交付金加算対象となっている整備も積極的に実施していただきたい。
ケア担当職員の改善
 定員50人以上の乳児院に非常勤の家庭支援専門相談員を1名配するために1,700万円プラスした。
身元保証人確保対策事業について
 全国社会福祉協議会が契約者となり、保険会社から保険金を支払う仕組みとする。児童福祉施設長は全国社会福祉協議会に直接申し込み等を行う。また、統合補助金で実施のため、その実施計画提出の準備をお願いしたい。
母子家庭就業・自立センター事業の拡充
 養育費の相談、強制執行の際の相談のために養育費に関わる相談員を新しく配置する(10月から)。実施する際には文書を出すので準備をしていて欲しい。また、統合補助金で実施するので、その実施計画提出の準備をお願いしたい。
施設の運営・整備
 一時保護施設の環境改善のための予算を平成18年度補正から確保。ハード交付金協議の詳細は決定次第示す(交付基礎点数はp.12参照)。

(家庭福祉課・鈴木措置費係長)
乳児院における心理職の配置:平成11年に児童養護施設に非常勤配置した心理療法担当職員を、13年に乳児院・母子生活支援施設にも拡大し、18年には常勤化し、児童自立支援施設にも拡大してきたところ。19年度からは児童養護施設・児童自立生活支援施設、母子生活支援施設・情短施設に配置されている被虐待児個別対応職員(非常勤)を常勤化し、支援充実を図る。
乳児院には家庭支援専門相談員が配置されているが、50名以上の定員施設を対象に新たに非常勤の家庭支援専門相談員を配置し、母子生活支援施設の職員配置も充実させた。平成19年度当初からこれらに取り組まれるよう、積極的な予算措置を図られたい。
職業指導員加算について(p.42)、指導内容等が職業指導員にふさわしくない場合は、充分指導して、家庭支援専門相談員や個別対応職員に振替え等をしていただきたい。ふさわしくない場合というのは、他職種を兼務している場合、平日の日中にその対象者が少ない場合、職業指導が学校における内容と類似している(英会話、パソコン、調理等)場合、前年度の入所充足率が90%を下回っている場合など。
旧虚弱児施設の特例協議について(p.42)、平成16年からの経過措置の期限は平成17年度となっているところであるが、平成19年度についても結核性虚弱児加算の対象入所がある場合、事前協議の対象となっている。しかし、同法人内に複数の施設があり看護師・保育士等の異動が可能な場合は、対象としない。
当初交付申請の留意点:母子生活支援施設または助産施設を設置していない市で年度当初に入所世帯や入所妊産婦が見込めない場合、当初交付は行われず、翌年清算していたが、年度途中で実施する場合を想定し、千円単位の金額でも当初交付申請してほしい。
医療費の取り扱いについて(p.43)、「緊急を要する時等やむを得ずタクシーを利用した場合」以外にもタクシーを医療費の一部として認めている事例も見受けられる。十分審査し、監査のポイントにも加えてほしい。
 p.47(資料2)照会のあった疑義に対する回答の1番2番も参照いただきたい。
@ (眼鏡等の費用の説明とあわせ、)医療費については原則としては医療保険の効く事項が対象となる。しかし、たとえ医療保険の対象でなくても、その医療行為をしなければ児童等の福祉に著しい害があると認められる場合(昭和57年5月25日付厚生省児童家庭局企画課長通知(p.47)参照)、対象となる。
A 予防接種の費用について
 インフルエンザだけでなく、BCG、おたふく、水疱瘡についても児童入所施設の措置費の事務費として支出(母子生活施設を除く)。里親は事務費がないので医療費で計上する。
B 就職支度費の支弁について
 採用証明書等が必要なことからも正社員として採用されることが前提であるが、正式採用の前に1ヶ月〜6ヶ月等の試用期間を経るアルバイトの場合は、支弁してよい。
予算基礎資料について、毎年度提出の施設数や人員等のデータは予算編成の重要な基礎資料なので、ご協力願いたい。本年度は7月上・中旬に厚生労働省から各都道府県に文書で通知する。
障害児施設における利用者負担金と児童入所施設における徴収金の調整
 障害者自立支援法が平成18年10月から全面施行された。措置と契約の両方が並存している。 サービスにかかる十分の一は食費・水光熱費も含めて徴収することとなるが、計算結果によって障害児から負担金を徴収しない場合もあるので留意いただきたい。身体障害・知的障害・精神障害等障害の種別によらず、サービスの一元化を図ることから、精神障害者手帳の交付を受けた者も措置費の減算を行う。(「別冊」通知案参照↓)
@ 地域小規模児童養護施設の措置費の扱い(計算)について
50人定員の本体施設に6名の地域小規模児童養護施設がある場合
(間違った計算)→56名分×保護単価
(正しい計算) →(50名分×児童養護施設本体の保護単価)+(6名分×地域小規模の保護単価)
A 調理業務の外注化について
 乳児院・児童養護施設の50名以上の定員において調理業務を外部委託する場合、調理員は配置しなくてよい(最低基準改正内容参照)。

(家庭福祉課・河尻指導係長)
「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」の動きに充分留意してほしい。
(検討内容)里親制度充実
子ども子育て応援プランの目標委託率と専門里親登録数との間にはかなり差がある(p.23表参照)。
里親委託推進事業に養子縁組支援経費を平成19年度から算入する。
専門里親委託児を平成17年から非行児にも拡大し、平成14年からは委託期間2年の原則を緩和する。
養子縁組あっせん事業は第2種社会福祉事業で、都道府県等への届出が必要。平成18年8月に営利目的のあっせんの禁止徹底通知を出した。
児童福祉施設等におけるケアの充実について(p.15)
@ 施設の小規模化の推進について(p.15)
 p.32に都道府県別小規模化の実施率の状況があるが、未実施についても推進をお願いしたい。
A ケア担当職員の質的・量的充実(p.15)
1) 個別対応職員の常勤化:平成13年度からの児童養護施設・母子生活支援施設等の個別対応職員の非常勤配置を平成19年度からは常勤職員配置として予算化した。
2) 50名定員以上の乳児院への家庭支援専門相談員の非常勤加配(前出)
家族療法事業の充実について(p.15)、情短施設だけで実施されてきた家族療法事業の対象施設を平成18年度から乳児院・児童養護施設・児童自立支援施設にも拡大したので促進に留意いただきたい。
身元保証人確保対策事業の創設について(p.17)
 追加資料(身元保証人確保対策事業実施要綱)p.100
@ 第3対象者について、本事業は今のところ平成19年4月1日ではなく、7月1日開始の予定である。対象者は該当の施設を6か月以内に退所した児童を含むので2月3月に施設を退所する子どもたちを漏らさないように配慮されたい。また、各施設・里親・自立援助ホームの措置が解除されてからのもので、6ヶ月以内のものという点にも留意いただきたい。児童相談所一時保護所の一時保護解除から6ヶ月以内のものであるが、婦人相談所一時保護所については、一時保護されているものと解除から6ヶ月以内のものが含まれる。
A 第5対象となる保証人について(p.101)、施設長または経営主体の代表者となるが、現時点で保証人になっている場合、保険の適用となるのは、7月以降である。
B 第6保障範囲について(p.101)、アパート等の賃貸時の連帯保証に「賃貸住宅または賃貸施設」とあるが、この賃貸施設には駐車場賃貸も含まれる。
C 第9保険料(p.102)ついては、今後の調整で変更がある場合もある。
D 保険料の支払いについて、全国社会福祉協議会と保険会社間の支払い関係については月払いとなるが、都道府県から全社協へ支払いについては半年に1回(概算払いの後、精算)を基本としたい。本事業開始時のみ、7・8・9月の3か月分の計上となるが、10月以降は6か月の計上としたい。現在、全社協と民間保険会社の間で最終的な詳細の約款・約定の作業が進められているので、決まり次第、Q&Aも含めて周知したい。
入所している子どもの権利擁護について(p.18)、平成18年度は施設女子職員と男子入所児童の性的人権侵害が相次いだ。平成18年10月6日付けの雇用均等・児童家庭局総務課長通知も発出され、この通知を踏まえ、施設内虐待の未然防止・早期発見に資するため、職員の資質向上、子どもの意見表明の機会の確保等について、施設を運営する法人への指導の徹底を図ってほしい。
児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)の推進について、児童養護施設等、退所児の自立促進のためにはとても重要。整備に取り組んでほしい。
児童家庭支援センター運営事業の推進について(p.19)、平成21年度までに100か所の設置を目標としているがp.38の表にも設置状況があるとおり、40道府県市で65か所。未設置の都道府県については設置について検討をお願いしたい。また、相談件数や指導委託件数が少ない児童家庭支援センターについては児童相談所と連絡を取りながら積極的な取り組みをお願いしたい。
自立促進等事業の廃止について(p.20)、平成19年度から身元保証人確保対策事業を創設することにしたため、平成18年度で平成16年度から自立に向けた取り組みを反映した事業等を支援する目的で実施してきた自立促進等事業を廃止する。
児童養護施設入所児童等調査について(p.20)、5年ごとに実施している「児童養護施設入所児童等調査」を平成20年2月に実施する。事前説明会を平成19年11月に開催する予定なので参加と併せて協力をお願いしたい。

(虐待防止対策室・川鍋補佐)
児童虐待防止法の見直しについては、今通常国会の平成19年4月から審議に入る予定である。安全確認の義務化、要保護児童対策地域協議会の設置の設置促進を努力義務化、ネグレクトケースの立ち入り調査、医療ネグレクトの親権問題など議論の難しいところもある。
児童相談所・市町村の対応強化について
【平成19年度地方交付税措置】(p.48)
 児童相談所の体制強化を図るために児童福祉司3名分経費を上乗せ確保した。各都道府県においても人材の確保に努めてほしい。
要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)の設置促進・機能強化について(p.53)、市町村における要保護児童対策地域協議会については、児童虐待防止の中核となる役割を持つ。子どもの目線からどのような対応が必要なのか、必要な援助はどういうものなのか、協議会から声をすい上げていってほしい。また、54頁にもあるように平成19年度地方財政措置において「子どもを守る地域ネットワークの機能強化など児童虐待対策の充実」を含めた地方単独の少子化対策に関する地方財政措置として、平成18年度まで約330億円の措置が約700億円に拡充された。地域協議会の充実と推進に活用されたい。

【平成18年度補正予算、平成19年度予算】(p.50)
 平成18年度補正予算においては、児童虐待等緊急対策として、車両整備、警備設備等の設置、一時保護施設の定員不足解消のための施設整備費を盛り込んだ。P.63の資料5一時保護施設等緊急整備計画の策定について および、P.65〜66の事務費の取扱いの通知についても参照されたい。緊急整備計画策定自治体には特例措置もあることにふれ、積極的な取り組みを求めた。
少年法の見直しは今国会で審議予定。14歳未満という年齢枠の撤廃により、この子どもたちも児童相談所一時保護所の対象となることに留意し、緊急整備計画の策定はこの改正の動向も見定めながらすすめてほしい。
児童虐待・DV対策等総合支援事業(統合補助金)のうち、「児童虐待防止対策支援事業」の「市長村および民間団体との連携強化事業」について(p.51〜52)、要保護児童対策地域協議会のネットワークの機能をどう充実されるか。設置後の実効的稼動のため、児童相談所のOBなど児童家庭相談に詳しい人の派遣など。市町村及び要保護児童対策地域協議会への支援、児童相談所1か所当たり:370万円。民間組織で児童虐待やいじめ、いじめを含めた友人関係などの電話相談を行っている「チャイルドライン」がNPO法人として13県にて立ち上がっている。これら民間組織を活用し、子ども本人からの声があがる電話相談の対応を委託し補助金の対象にする。(平成19年度予算成立後施行)1都道府県(指定都市または児童相談所設置市)あたり:93万2千円。

(その他)
虐待防止全国フォーラムは平成19年度は11月10日(土)11日(日)熊本市で開催する。
特に本年度は虐待防止法改正が見こまれる年でもあるのでこの趣向を凝らしたい。
オレンジリボンキャンペーン(p.53)
民間キャンペーンを国として応援する。各自治体もこのキャンペーンに積極的に取り組んでほしい。育成環境課においてキャンペーンに取り組むための事業経費を補助金メニューに取り入れた(シンポジウムやフォーラムなどの会議事業は対象外)。パレードやリボンイルミネーション(例:レインボーブリッジをオレンジリボンのイルミネーションにする)など広く社会に呼びかけたい。

【児童相談所運営指針の手引きの改正】(p.49)
 子どもの安全の対応については、厚生労働大臣からも「待ったなし、空振りなし、隙間ない」の呼びかけがあった。このスローガンも併せて、再度の周知を図られたい。
 3月16日付で医政局総務課長通知(犯罪被害者指導計画関係)が発出されている。医師や保健師の研修にも各自治体で取り組んでほしい。

2.平成19年度 全養協「事業計画・予算」が決定されました。

 平成19年3月19日に開催いたしました平成18年度全養協第2回総会にて、平成18年度補正予算、平成19年度事業計画・予算が決定されました。

【平成18年度全養協第2回総会における主な改正内容】
1) 全国児童養護施設協議会「運営内規」第5条(協議員の委嘱)
 協議員数の変更:(旧)63名 → (新)66名
 (指定都市の増加のため:堺市・新潟市・浜松市)

2)全国児童養護施設退所児童自立支援事業「運営要綱」対象者の拡大と自立支援金について
 @対象資金の拡大(新たに、修学資金を追加した)
  旧)福祉資金の福祉費(50万円)のみ
      ↓
  新)福祉資金の福祉費、修学資金(修学費・就学支度費)
  ※参考:修学資金
    (1) 修学費(高校:月額3.5万/高専・短大:月額6万/大学:月額6.5万)
    (2) 就学支度費(50万以内)
 A給付:一人1回に限る(上限25万円以内)
 B期間:改正内容は、平成19年4月1日〜平成21年3月31日から施行する。
  遡って、修学資金を対象とするものではありません。

平成19年度 全国児童養護施設協議会 事業計画

【情勢認識】
1.  児童虐待に関する児童相談所への相談は、3.4万件と増え続け、市町村への相談も4万件を超えるなど、子育てをめぐる事態は深刻化している。そのため児童養護施設などに虐待を受けた入所児童が増え、重篤化する問題をかかえる子どもたちへの養育やケアにおいては混乱をきたし、かつ社会的自立のための援助・支援が十分に対応しきれていない状況にある。そしてまた、児童養護施設における権利擁護が課題となっている。
2.  こうした情勢を背景に、国では今日の要保護児童問題を踏まえ、今後の社会的養護体制の将来像や関連制度のあり方、当面講ずるべき施策などを検討するために、平成19年2月内閣府に「子どもと家族を応援する日本」重点戦略会議、および厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課に「今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会」を設置、協議を進めている。
3.  これに先立ち立法府においては、児童虐待防止法の見直し検討が進められている。さらに平成18年度政府補正予算に伴い、厚生労働省は平成19年1月23日付にて児童虐待防止を強化するため「児童相談所運営指針等」の改正を通知した。
4.  全国児童養護施設協議会では、昨年より近未来像Uの残された課題に対応するため、「子ども家庭福祉・社会的養護に関する制度のあり方検討特別委員会」ならびに「児童養護における養育のあり方に関する特別委員会」を設置し、この平成19年1月からは厚生労働省家庭福祉課の参画も得て、子どもの発達保障を基本とする制度施策と養育のあり方の検討をすすめてきている。
5.  とりわけ、わが国においては、社会保障全体に占める子ども家庭福祉に対する費用がわずかに3.6%である。さらに、地方分権などによる格差の問題も大いに懸念される。
子どもの危機はわが国の未来の危機、子どもの健全な成長なくしてわが国の未来なしとの社会全体の意識改革が必要である。そのうえで公的な責任と役割を明確にし、乳幼児期から成人期まで発達保障と自立を支えるための包括的、長期的な次世代育成施策が確立していくことが急務な課題である。

 こうした情勢と新たな動きを、わが国における子ども家庭福祉の転換期としていく中心として、全国児童養護施設協議会は平成19年度事業計画において以下の重点事業を中心として、関係事業の遂行に取り組む。

〔重点課題〕
1. 「児童養護施設の近未来像U」の実現と「養育理念」構築に向けての取り組み
 「子ども家庭福祉・社会的養護に関する制度のあり方検討特別委員会」ならびに「児童養護における養育のあり方に関する特別委員会」における提言(まとめ)を行う。まとめは、子どもの発達権保障を基本とした「子ども家庭福祉基本法」の創設を見据えた提言と養育の構築、またそれらに求められる人的・専門的なケア等の基盤整備に資するための報告とし、その提言を実現していくために広く関係機関への働きかけを行う。
 また、今後の地方分権の動向を踏まえ、要保護児童対策事業の強化を推進するよう広く行政機関等へ働きかける。
2. 児童養護施設における人材育成の充実のための取り組み
 複雑化、重篤化する子どもたちへのケア・回復、養育と社会的自立のための援助・支援、また専門的ケアの向上のために、児童養護施設における人材養成・職員の資質・専門性の向上は急務の課題である。養育のあり方の協議内容をもとに、研修体系の構築をはかり、具体的な研修プログラム・内容を検討する。
3. 権利擁護と施設内の子どもの権利侵害の防止の取り組み
 児童養護施設は、子どもたちの安心、安全、安定した生活の拠点であり、権利擁護を基本として養育の充実と治療的なケア、そして社会的自立までの援助・支援を強化する必要がある。引き続きチェックリストの検証・検討を行い、また児童養護施設における人権侵チェックリストへの取り組みを強化するとともに、発生した事件・事故について児童養護施設、都道府県・ブロック児童養護施設協議会および全国児童養護施設協議会の各段階での把握、適切な対応、再発防止等について検討し、取り組む。
4. 子ども家庭福祉の増進および児童福祉諸法改正に向けた児童5種別協議会等との協働
 社会的養護や次世代育成について関係種別をはじめとし、社会全体で取り組む必要がある。そのためにも児童5種別協議会で当面の政策動向を適切に把握し、情報を共有化し、子ども・家庭福祉対策等の充実に取り組む。
 また、児童福祉関係団体との連携・協働をもとに、子どもの最善の利益を保障するための施策の確立と財源確保をはかるための世論形成、ソーシャルアクションや市民ネットワーク等社会への協働活動(社会的なアピール、シンポジウムの開催)に協力する。

制度政策部
 児童福祉法・児童虐待防止法等の制度改正の動向に対し、児童養護施設のこれまでの蓄積(児童養護施設の現況評価と検証)を踏まえた提言をはじめ、すべての子どもたちの「最善の利益」の実現に向けた活動の充実に取り組む

1. 法制度改正や地方分権・次世代育成への取り組み
2. 「児童養護施設の近未来像U」の実現と、子どもの発達権保障を基軸とした「子ども家庭福祉基本法(仮称)」の創設を見据えた提言と養育の構築に向けた取りまとめを行う。
(1) 「子ども家庭福祉・社会的養護に関する制度のあり方検討特別委員会」運営と報告(まとめ)
(2) 「児童養護における養育のあり方に関する特別委員会」運営と報告(まとめ)
3. 平成19年度児童養護施設関係予算の確実な執行と平成20年度予算への提言と確保
4. 児童福祉関係者の諸制度や課題への対応について種別協議会間の協働化推進
(1) 児童福祉部関係5種別協議会(正副)会長会への参画
(2) 児童福祉部関係5種別協議会ワーキングチームへの参画
5. 立法府等へ向けた活動による社会的養護への理解促進
(1) )「児童養護を考える会」への協力
(2) その他、必要に応じたソーシャルアクション

総務部
 入所児童の権利擁護の推進と実現のための取り組みを充実させる。
 全国児童養護施設協議会の組織・事業・財政全般にわたり把握、検討し、また広報活動を推進しながら円滑な組織運営を図る。

1. 組織活動の円滑な推進
(1) 総会(5月11日)、常任協議員会、ブロック協議会会長会議、顧問・相談役会議等各種会議の開催
(2) ブロック協議会・都道府県社会福祉協議会活動の強化・推進ならびに情報・資料の収集・提供
2. 児童養護施設における入所児童の権利擁護の取り組み強化
(1) 児童養護施設における人権擁護と人権侵害の禁止・防止・対応のためのチェックリストの分析・課題整理・情報提供・見直し
(2) 施設の自己点検および児童養護施設第三者評価の推進によるサービスの質の向上
(3) 苦情解決の仕組みの普及・定着
(4) 権利侵害への対応事例の分析、課題整理及び情報提供
(5) 権利侵害事件の発生に対する各児童養護施設、都道府県児童養護施設協議会・ブロック協議会、全国児童養護施設協議会のそれぞれの段階における組織的な協力のための事実確認・相談・調整・支援・対応方策の検討
(6) 権利侵害事件が発生した場合の施設の対応方策の検討
(7) 『全国児童養護施設協議会 倫理綱領』の検討
3. 施設を退所する子どもの自立支援のためのシステム構築の検討
(1) 身元保証制度の普及、利用促進の取り組み
(2) 児童養護施設退所児童自立支援事業検討委員会の開催
(身元保証制度等についての内容改善への協力)
(3) 他の常設部会と連携した自立支援のためのシステムの検討と構築
4. 第61回全国児童養護施設長研究協議会の開催
(1) 日時:平成19年10月29日(月)30日(火)31日(水)
(2) 会場:北海道函館市 函館国際ホテル(函館市大手町5-10)
(3) 永年勤続感謝、児童文化奨励絵画展、研究奨励賞(松島賞)の実施
5. 「全国児童養護施設退所児童自立支援事業」の実施
(1) 運営委員会の運営
(2) 制度の周知及び適切な運用
6. 広報活動の推進
(1) 情報提供活動の強化
@ 児童養護施設パンフレット(「すこやかに」「もっともっと知ってほしい児童養護施設」等)の普及
A 全養協ホームページの運営
B 「全養協情報」(要覧)第27号の発行(全施設対象)
C 「全養協通信」の発行(全施設対象)
D 「協議員情報」の発行(全養協協議員対象)
(2) 季刊「児童養護」の購読管理、販売促進
(3) 全国児童養護施設協議会一覧の作成
7. 災害見舞金制度の運用
8. 児童養護施設や子どもたちへの企業・団体等による社会貢献活動等への協力
(1) (財)日本児童福祉協会による児童養護施設等事故補償互助共済事業への協力
(2) メイスン財団奨学制度(財団法人東京メソニック協会)への協力
(3) その他、必要な協力

調査研究部
 子どもの発達保障を明確にとらえた子ども家庭福祉制度の確立にむけた制度政策提言、および予算要望の根拠となる関連データの収集と関連研究等の実施を行う。

1. 調査研究活動の推進
(1) 児童養護施設にかかわる調査の実施・分析
@平成19年度児童養護施設基礎調査の実施
A「心理療法担当職員の役割・機能に関する調査」の分析
(2) 研究事業の推進
@退所児童の自立支援・アフターケアに関する研究(仮称)
Aその他関連研究
2. 新たな施設機能展開に関わる調査研究及び情報の収集・提供
(1) ファミリーソーシャルワーカー、小規模グループケア、地域小規模児童養護施設、個別対応職員、心理療法担当職員、児童家庭支援センターなど新規および拡大された事業に関わる実態把握および情報提供
(2) 児童養護施設および、児童家庭支援センターにおける地域支援事業の実態把握、情報提供
3. 児童の自立支援に関する調査・研究(含む、「児童養護施設入所児童の進路に関する調査」)
@ 「平成18年度進路状況等調査」の分析
A 「平成19年度進路状況等調査」の実施
4. その他、必要に応じて調査研究を行う。

研修部
 養育の質を高め、専門性を発揮できる人材の育成に向けて研修体系を検討し、研修実施を行う。総務部等と連携し、児童の権利擁護のための研修や権利侵害から再建した施設の事例を他の場面に生かすプログラムを大会や研修会に取り入れる

1. 養育の質を高め、専門性を発揮できる人材の育成にむけた、研修体系の検討
(1) 平成19年度における研修実施の充実・強化、改善・改良
(2) 中堅・主任的役割を負う職員のスーパーバイザー養成研修の検討
(3) 転換期にある制度・養育のあり方に連動した研修体系の整備・将来像の検討
2. 「平成19年度全国児童養護施設中堅職員研修会」の開催
(1)日時 平成20年1月16日(水)〜18日(金)
(2)開催地 全国社会福祉協議会 第3・4・5会議室 他
3. 「ファミリーソーシャルワーク研修会」開催協力(全国社会福祉協議会、全国乳児福祉協議会、全国母子生活支援施設協議会との共催)
4. 第61回全国児童養護施設長研究協議会プログラム委員会の開催
5. 研究奨励賞(松島賞)運営委員会の開催
6. 小委員会の設置・運営

季刊「児童養護」編集委員会
1. 季刊「児童養護」の編集・発行(第38巻)
(1) 編集方針
@ 現場実践の道標となりうるような養護理論の形成と法則性の発見を目指した児童養護施設の専門研究誌とする
A 歴史的・社会的実践を掘り起こし、施設養護の発展の一助とする
B 子どもの人権保障の立場にたち、内外に問題提起の役割を負う
C 施設間での連携やネットワークを図るための一助とする
(2) 児童養護第38巻の編集
編集委員会において第38巻(第1号〜第4号)を編集する。

《全国社会福祉協議会及び他団体の諸事業への協力》
 全社協や関係団体等が行う諸会議並びに国際協力・交流事業についての協力や資生堂社会福祉事業財団、三菱東京UFJ銀行、こども未来財団等が主催する事業に対して必要に応じての協力を行う。

3.「全国児童養護施設退所児童自立支援事業の要綱改訂」と登録のお願い

 本事業の対象者の要件が変更されました。この春に施設を退所し就職や進学する際に生活福祉資金貸付制度(@福祉費の支度費、A修学資金の修学費、B修学資金の就学支度費の3種類のみ)の連帯保証人になられた施設長の皆さまは、全養協に「登録書」をお送りください。
 関係書類につきましては、5月中旬までに全養協ホームページに掲載する予定です。

4.「児童養護における人権擁護と人権侵害の禁止・防止・対応のための要項およびチェックリスト改訂版(第一次試案)」への取り組みのお願い

 昨年末に、すべての児童養護施設宛に「人権擁護の自己点検にむけて本要項およびチェックリスト」を送付いたしました。チェックリストにつきましては、各施設にてお取り組みのうえ、回答書を全養協事務局宛に送付いただくようお願いしております。
 年度末の大変お忙しい時期ではございますが、「回答書」をご提出いただいていない施設におきましては、ご対応のうえご提出くださいますようお願いします。

5.全養協進路調査「平成18年度児童養護施設在籍児童等の進路に関する調査」にご協力ください。

 全養協は、児童養護施設在籍児童の自立支援に資するため上記調査を毎年実施しております。本調査につきましては、会員施設担当者の事務の省力化と全養協調査の回収率の向上のため、従来の文書による調査から、ウェブ画面(パソコン上の画面に直接入力する)を活用する調査に変更して実施いたします。詳細につきましては、別途調査実施に関する依頼文書を送付いたしますので、詳細につきましてご確認くださいますようお願いいたします。

6.「見つけよう みんながもっている いいところ」(平成19年度児童福祉週間標語)

 子どもや家庭、子どもの健やかな成長について国民全体で考えることを目的に、毎年5月5日の「こどもの日」から1週間を「児童福祉週間」と定めて、児童福祉の理念の普及・啓発のための各種事業及び行事を行っています。平成19年度は、「次世代を担う子どもたちからの発信」をテーマに児童福祉の理念を広く啓発する標語を全国募集した中から主催者で選考した結果、上記の作品が「児童福祉週間」の標語と決定いたしました。

7.その他

@ 平成18年度「JOMO児童養護施設・母子生活支援施設等奨学助成事業」の結果について
 今年度、JOMO奨学助成事業に児童養護施設から173名の申請があり、172名(1,720万円)の助成をする予定です。
 本事業につきましては、次年度も引き続き実施する予定ですので、該当する児童や各施設職員の皆さまへの周知をお願いいたします。
A 2007(平成19)年度「メイスン財団奨学制度」について
 平成19年3月中旬にすべての児童養護施設宛に「実施要領」を送付いたしました。提出〆切は4月5日(木)までとなっていますが、提出もれ等ございましたら、至急全養協事務局宛にご連絡ください。
 (内 容)
1) 主 催:財団法人東京メソニック協会
2) 助成対象:全国の児童養護施設を退所し(措置延長者含む)高校卒業後、平成19年4月に、大学、短期大学、専門学校等に進学する向上心旺盛で、特に経済的援助を必要とする者、若干名。ただし、他の機関から授業料の助成を現に受けている者および授業料免除の者(特待生等)は除く。(授業料以外の助成は可。例:雨宮児童福祉財団の入学金助成、独立行政法人日本学生支援機構の奨学金、JOMO奨学助成など)。
3) 助成期間:進学した学校の卒業まで。ただし、退学・休学・留年の際は助成を打ち切る。
4) 助成内容:進学する学校の授業料。ただし、年50万円を限度とし、返済は不要。
5) 日 程:募集要項を配布:平成19年1月中旬 申込〆切:4月5日(木)
6) その他:最終選考にすすんだ場合、施設長の推薦文と本人の志望動機を英文で作成していただきます。
B 第57回「社会を明るくする運動」への協力について
1) 内 容:すべての国民が、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない明るい社会を築こうとする全国的な運動です。
2) 重点目標・統一標語
 本年は「犯罪・非行の防止と更生の援助のため、地域住民の理解と参加を求める」を重点目標に、「防ごう犯罪と非行 助けよう立ち直り」を統一標語とし、7月を「社会を明るくする運動」を強調月間としています。
 全国各地におきまして、関係集会の、フォーラムの開催、ポスター・パンフレットの配布がなされますのでご協力よろしくお願いいたします。

【 今回送付したもの】
 @ 全国家庭福祉施策担当係長会議資料(全社協児童福祉部複製)
 A 全国児童養護施設心理療法担当職員に関する実態調査結果
 B 全養協・平成18年度児童養護施設事業実施状況等調査結果