全国児童養護施設協議会では、児童養護施設で生活する子どもの安心・安全を守り、養育の向上をはかるため、2010年5月に「全国児童養護施設協議会倫理綱領」を策定しました。
 今後、全国の児童養護施設の役員・施設長・職員が、毎日の子どもとのかかわりのなかで子どもの最善の利益を追求し、養育にたずさわるための指針として活用をはかります。

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全国児童養護施設協議会 倫理綱領

社会福祉法人 全国社会福祉協議会
全国児童養護施設協議会

原 則

 児童養護施設に携わるすべての役員・職員(以下、『私たち』という。)は、日本国憲法、世界人権宣言、国連・子どもの権利に関する条約、児童憲章、児童福祉法、児童虐待の防止等に関する法律、児童福祉施設最低基準にかかげられた理念と定めを遵守します。
 すべての子どもを、人種、性別、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、保護者の社会的地位、経済状況等の違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重します。

使 命

 私たちは、入所してきた子どもたちが、安全に安心した生活を営むことができるよう、子どもの生命と人権を守り、育む責務があります。
 私たちは、子どもの意思を尊重しつつ、子どもの成長と発達を育み、自己実現と自立のために継続的な援助を保障する養育をおこない、子どもの最善の利益の実現をめざします。

倫理綱領

1. 私たちは、子どもの利益を最優先した養育をおこないます
 一人ひとりの子どもの最善の利益を優先に考え、24時間365日の生活をとおして、子どもの自己実現と自立のために、専門性をもった養育を展開します。
2. 私たちは、子どもの理解と受容、信頼関係を大切にします
 自らの思いこみや偏見をなくし、子どもをあるがままに受けとめ、一人ひとりの子どもとその個性を理解し、意見を尊重しながら、子どもとの信頼関係を大切にします。
3. 私たちは、子どもの自己決定と主体性の尊重につとめます
 子どもが自己の見解を表明し、子ども自身が選択し、意思決定できる機会を保障し、支援します。また、子どもに必要な情報は適切に提供し、説明責任をはたします。
4. 私たちは、子どもと家族との関係を大切にした支援をおこないます
 関係機関・団体と協働し、家族との関係調整のための支援をおこない、子どもと、子どもにとってかけがえのない家族を、継続してささえます。
5. 私たちは、子どものプライバシーの尊重と秘密を保持します
 子どもの安全安心な生活を守るために、一人ひとりのプライバシーを尊重し、秘密の保持につとめます。
6. 私たちは、子どもへの差別・虐待を許さず、権利侵害の防止につとめます
 いかなる理由の差別・虐待・人権侵害も決して許さず、子どもたちの基本的人権と権利を擁護します。
7. 私たちは、最良の養育実践を行うために専門性の向上をはかります
 自らの人間性を高め、最良の養育実践をおこなうために、常に自己研鑽につとめ、養育と専門性の向上をはかります。
8. 私たちは、関係機関や地域と連携し、子どもを育みます
 児童相談所や学校、医療機関などの関係機関や、近隣住民・ボランティアなどと連携し、子どもを育みます。
9. 私たちは、地域福祉への積極的な参加と協働につとめます
 施設のもつ専門知識と技術を活かし、地域社会に協力することで、子育て支援につとめます。
10. 私たちは、常に施設環境および運営の改善向上につとめます
 子どもの健康および発達のための施設環境をととのえ、施設運営に責任をもち、児童養護施設が高い公共性と専門性を有していることを常に自覚し、社会に対して、施設の説明責任にもとづく情報公開と、健全で公正、かつ活力ある施設運営につとめます。
2010年5月17日 制定




 全国児童養護施設協議会は、児童養護事業の発展と向上を目指し、それをもって児童福祉を推進するために全国的な連絡調整を行うと同時に、事業に関する調査・研究・協議を行い、かつ、それを実行することを目的としています。



 戦後の混乱期、かつて孤児院と呼ばれ戦災孤児、浮浪児、引揚孤児等の保護育成事業を行ってきた養護施設は、1947年(昭和22年)児童福祉法の成立を受け、児童福祉最低基準に基づき、児童の健全育成及び児童福祉の積極的推進を図ってきました。そして児童をめぐる諸問題への研究活動とその向上をめざすことを目的に、1950年(昭和25年)全国養護施設協議会が創立されました。
 当時の全養協の活動は施設に入所する児童の衣食住を確保するための予算(措置費)確保運動が中心でした。また昭和40年代からの「子どもの人権を守るために」集会の開催、子どもの作文集(「泣くものか」)の発行、親権と子どもの人権問題への取り組みなど、子どもの人権擁護運動の先駆的役割を果してきました。
 その後、措置費の内容は充実されましたが、全養協では引き続き学習機会の確保、安定した就労への自立支援策の充実、生活の質の向上にむけた予算確保を進めるとともに、子どもの権利擁護をめざしたサービスを提供するため、調査研究事業を実施し、施設長及び職員の資質向上のための研修強化に取り組んでいます。
 平成10年の児童福祉法の改正では、「養護施設」から「児童養護施設」へと名称変更し、その目的に児童の自立を支援することが追加されました。さらに平成11年7月には個人の選択を尊重した制度の確立や質の高い福祉サービス提供を方針とした社会福祉法が成立しました。そこで児童養護施設においても、児童の権利擁護システムや、サービスの質の向上にむけた積極的な事業展開を行うと同時に、今、国民的課題になっている児童虐待へ対応するために、児童養護施設の将来像の検討に着手しながら体制整備を進めています。



 全国児童養護施設協議会は各都道府県・指定都市社会福祉協議会より推薦された児童養護施設の代表者及び学識経験者等の協議員により構成されています。
 会長1名、副会長4名、専門部長4名、その他常任協議員を中心に、各専門部会、委員会に分かれて活動しています。



 各施設は所在する都道府県・指定都市の児童養護施設協議会組織に所属しています。
また8つのブロックに分かれ、ブロック別に研修会、協議会なども活発に行われています。